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語り継ぐ黒人女性 ミシェル・オバマからビヨンセまで

岩本裕子著

投影されるアメリカ 2009年1月、アメリカで初の黒人大統領が誕生した。わずかその1年前まで、政局で話題に上ることもなかったオバマ氏が、急速に国民の支持を得た背景には、アメリカ黒人女性たちの影響力を無視することはできない。
アメリカ社会の大きな転換期とも言えるオバマ大統領就任を糸口に、奴隷の子孫としてその歴史を語り継ぐ女性たちを浮き彫りにする。
母から娘へ、そして血を超え世代を超えて、過去の歴史を今に伝えることの意味を問う一冊。

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初版2010年9月17日 ISBN978-4-944098-87-3 C0074
A5判/192頁●定価 1,944円(税込)

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第1部黒人初の大統領誕生
 1章歓喜に包まれた記念式典 ……就任記念コンサートと就任式祝賀歌唱
  1 WE ARE ONE――「われわれは一つ」
  2 合衆国への賛歌――♪America the Beautiful
  3 マリアン・アンダーソンと♪My Country 'Tis of Thee
 <コラム:パリに愛された女たち/パリの教会でゴスペルを聴く>
 2章世論を動かした重要人物……オプラ・ウィンフレイの影響力
  1 アメリカにおけるオプラの存在
  2 オバマ支持表明と支援活動
  3 オバマ政権下の黒人女性閣僚たち
 <コラム:『エッセンス』表紙に登場した母娘/勝利演説で紹介された女>
 3章ファーストレディという存在……「黒人奴隷の子孫」としてのミシェル
  1 白人のファーストレディたち
  2 「サウスサイド・ガール」のミシェル
  3 賢明なファーストレディへ
 <コラム:大統領の子どもを産んだ黒人奴隷/「トップモデル」扱いのミシェル>
第2部黒人女性という表現媒体
 1章人生そのものを歌い描く……アメリカ黒人音楽とハリウッド映画
  1 「ソウルの女王」アレサ・フランクリン
  2 ビヨンセと『キャデラック・レコード』
  3 モータウン・レコードと『ドリームガールズ』
  4 ダイアナ・ロスと『ビリー・ホリデイ物語』
 <コラム:最初の黒人女優「黒いガルボ」/アカデミー賞と黒人女性たち>
 2章スクリーンからの語りかけ……映画の主人公になった黒人女性たち
  1 黒人シンデレラからディズニー初の黒人プリンセスへ
  2 ミュージカル映画『ヘアスプレー』
  3 女子ボクサー映画『ガールファイト』
  4 モニークと『プレシャス』
 <コラム:ハーレムの通り名になった女/無名戦士の墓を守った女>
 3章語り継ぐ黒人女性たち……母から娘へ、血を超え世代を超えて
  1 『カラーパープル』から『プレシャス』まで
  2 トーク番組でのハリー・ベリーの語り
  3 母から娘への語り継ぎ
  4 親から子への語り継ぎ
 <コラム:着せ替え人形の女たち/記念切手になった女たち>

あとがき
映画タイトル索引/人名索引

LookingIn

記念切手になった
女たち


  ブルースの父W・C・ハンディが、黒人で四人目の合衆国記念切手の絵柄になったことは本文でふれた。最初に切手になったのは一九四〇年で、教育者ブッカー・T・ワシントンだった。黒人女性はハーレムの通り名にもなった、ハリエット・タブマンの一九七八年まで待たされた。
 二〇一〇年までの七十年間で四十人程の黒人偉人たちが「黒人遺産」記念切手となった。うち十八人が女性で、大半が二十一世紀以降の発行である。本書で紹介してきた女性を発行年順に列挙してみよう。FDR政権で要職に就いたメアリ・ベシューン、反リンチ運動家アイダ・B・ウェルズ、最初の宇宙飛行士メイ・ジェミスン、文化人類学者ゾラ・ニール・ハーストン、カーター政権閣僚パトリシア・ハリス、歌手マリアン・アンダーソンとジョゼフィン・ベイカー、女優のハッティ・マクダニエルと続いている。
 二〇〇九年に公民権運動家シートが発行された。男女同数で、一シートに白人を含む十二人のNAACP創設メンバーが顔を並べた。上段左端はメアリ・テレルである。アイダ・B・ウェルズと同時代に活躍し、黒人で最初の全国組織、全米黒人女性協会の初代会長となった。
 テレルの父親は南部黒人で最初の百万長者で、一八八〇年代に娘を欧州留学に出した。テレルは自伝に、人種に寛容なドイツで星条旗を見た感激を残した。人種差別の国であっても祖国には違いなく、同胞黒人の地位向上に貢献したいと決意して合衆国へ帰るのだった。
 〇九年の個人切手は、教育者アンナ・ジュリア・クーパーだった。黒人教育に生涯を捧げ、自らも六十歳を過ぎてパリに留学し、ソルボンヌ大学で博士号を取得した。「私にできたのだから貴女にも…」切手のクーパーの聡明な目は、そんな言葉を語っているように見える。(P185コラムより)

著者紹介

岩本裕子 いわもとひろこ
1977年、津田塾大学(アメリカ研究)卒業後9年目に立教大学大学院(西洋史専攻)へ進学。2006年、同大学院で博士(比較文明学)学位取得。現在、浦和大学こども学部教授。著書は『アメリカ黒人女性の歴史』(明石書店)他、共著に『アメリカフェミニズムのパイオニアたち』(彩流社)など多数。

主な著作
『アメリカ黒人女性の歴史』(明石書店)
『アメリカ研究とジェンダー』(共著、世界思想社)
『スクリーンで旅するアメリカ』(メタ・ブレーン)
『スクリーンに見る黒人女性』(メタ・ブレーン)
『スクリーンに投影されるアメリカ』(メタ・ブレーン)

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