熱風アジア・大平洋 越境メディアが拓く「汎アジア」

産経新聞大阪本社編集局 編

急速に進歩を遂げるアジア・太平洋地域。国境を越えて吹く「熱い」風は、どのような次代の潮流を創っていくのか。産経新聞(大阪本社発行)で連載された、経済、文化を中心とした現地レポート集。

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初版1996年6月1日 ISBN4-944098-10-3 C0063
B6判/224ページ ●定価 1,342円(税込)

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序文 アジア大平洋の生活文化をつくる、熱い風。
文化は進化する 〜越境メディアが創る「汎アジア」大衆文化

隣人たちの阪神大震災 〜阪神大震災で顕在化した隣人意識

野球は交流する 〜日本式野球による文化交流

女性たち、しなやかに 〜東南アジアの急成長を支える女性パワー

ひろがるニホン語 〜オーストラリアの「アジア語」教育熱

水と森と空と 〜開発と環境保護の両立は可能か

大空に競う 〜アジア太平洋地域の航空需要の拡大

企業烈々 〜APEC内の急成長企業

明日を生きる 〜フィリピンの人材育成
あとがき
取材協力者一覧

「脱亜」して近代化急ぐ国々(産経新聞/1996年6月26日掲載)
森鴎外は明治の日本を「普請中」の国と呼んだ。せっかちな日本人すら百年かけて達成したことを、東アジアの国々は2、30年で達成してしまう勢いだ。しかし当然ながら、日本が苦しんできた公害や、共同体の解体といった問題に直面することになる。西洋文明の「変電所」の役割をはたしてきた日本には、アジアの近代化を軟着陸させるために貢献できることがあるにもかかわらず、昨今はアジアからとり残されていくような不安すら覚えて、もどかしい。まずわれわれはアジアの状況についてもっと知るべきであろう。東南アジアの若者たちが、どれほど日本製のアニメやポピュラーソングやトレンディドラマに熱い目を注いできたか。まだまだ日本を好意的にみてくれる人々は、多い。オーストラリアのニホン語熱の高まりなど、本当にありがたいことだ。日本文化の影響をうけた国々では、宗教的な原理主義が弱まり、生活空間が清潔になり、モノが可愛らしくなっていくという。すでに携帯電話、インターネット、通信衛星を通じてのコミュニケーションが国境や宗教を越えて拡大しているが、日本は得意のポピュラー文化により、ようやく諸外国へ向けた「顔」をもつようになった。
本書は、昨年1年間、産経新聞大阪本社発行の朝刊一面に掲載された〈新風・アジア太平洋〉シリーズをまとめたものである。衛星放送テレビなど越境メディアの普及によって構成されつつある「汎アジア」ポピュラー文化をとりあげた『文化は進化する』から、アジア太平洋地域の持続的成長に不可欠な「人材育成」をテーマにした『明日を生きる』まで、計9シリーズ56回にわたる。取材に当たっては「ふつうの人々」の意見やエピソードを多く集めたという。野球の普及による日本とタイの青少年たちとの民間交流、オーストラリアでの日本語教育の現状、日本女性の海外進出、東南アジアの急成長を支える女性パワー、環境保護と開発のかねあい、激化する航空ビジネス等、たんねんに現場を踏んで探っている。
連載中に大震災がおこり中断したが、震災にかかわったアジアの隣人達を取材することで、再びテーマに合流した。具体的で、読みやすく、男女を問わずビジネス人間にすすめたい一冊である。ただ本書では、大阪がアジアとの関連で書かれているが、私には大阪がアジア的な活気に満ちているとは思えないのだ。東アジアの国々も「脱亜」をはかって近代化の未知を歩み出したのであり、ちまたに流布する〈大阪=アジア〉説は益するところがないと考える。大阪はもっと真剣にアイデンティティを考える必要があろう。

熱風アジア太平洋 発売中(大阪新聞/1996年5月20日掲載)
アジアが今、熱い。中国や東アジアを中心とした経済の急成長をエネルギー源にした変貌の奔流が、米西海岸からオーストラリア大陸を含む広大な地域を覆っている。そんな息吹が伝わってくるのが、香港、台湾、マレーシア、さらにはオーストラリア、モンゴルなど十ヵ国に取材した、このルポ集だ。衛星テレビを軸にポピュラー音楽や漫画などの分野で醸成されつつある新たな「汎アジア文化」、急成長の担い手でもある女性たち、オーストラリアで広がる日本語などアジア語教育、開発と環境の両立の問題など硬派のテーマを、ふつうの人々のエピソードをふんだんに織り込んだ読み物にまとめているので、とっつきやすい。
産経新聞(大阪本社発行分)の朝刊一面に昨年一年間、9シリーズ56回にわたり連載された〈新風アジア太平洋〉シリーズをまとめたもので、ますますエネルギッシュになっている地域の現状を強調するため、出版に際してタイトルを〈熱風〉に変えたという。

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